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9月前半のJCG予選データに基づくナーフ後BO3環境の考察

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まる@ESV
まる@ESV
1. はじめに

 RAGE Vol.5、お疲れさまでした。
今回、自分は予選で不甲斐ない結果に終わってしまいましたが、GRAND FINALSでは一プレイヤー・一観客として楽しませていただきました。

 ここで一つの区切りということで、自分なりに調べていた9月前半のBO3環境についてまとめておこうかなと思い、こうして文章をしたためています。
惨敗を喫した予選を振り返ってみたとき、プレイや構築の細かなチューニング、時の運などもさることながら、そもそものデッキ選択の段階でもっとやれたことがあったと痛感したため、今回8月末のナーフを機に独自に環境を調べていた次第です。

 結果として、GRAND FINALSとの併催だったシャドバフェスの3人チーム制トーナメントでは、7 – 1にて2位タイという成績をいただきました。
優勝を逃し、個人成績も6 – 2と決して胸を張れるものではありません。ただ、成績うんぬんを抜きにしても、事前の下調べによるデッキ選択・構築が少なからず功を奏した面もあったため、この記事を読まれる方に多少なりとも有益な情報を提供できればと思います。

 まもなくWLD環境も終わるこのタイミングで……という気もしますが、体感と実際の環境が異なる可能性が少なからずあり、そのズレを埋めるための材料が割と身近に転がっているというのはSFL環境にもきっと共通するのではないかと思うので、気になった方は読み進めていただければ幸いです。

2. BO3環境

 ランクマッチとは異なるBO3の環境を掴むにあたって、今回は9/1~9/10におけるJCG構築戦の予選出場者の全リスト(1回戦不戦敗の方のリストを除く)を大まかに分類し、デッキタイプごとにその総数と、予選突破数を集計しました。チーム戦のデッキ登録期限の都合上、9/15開催分については全体のリストは集計していませんが、大幅な分布の変化は起こりにくいだろうということで、予選突破リストだけは確認をしています。
 以前は決勝トーナメントのリストだけを集計していましたが、予選と決勝で使用リストを変更するプレイヤーが少なくないこと、各デッキタイプの母数が分からない状態で、決勝での使用率だけから環境を判断することに危うさを感じたことなどから、今回は予選段階を集計対象としました。
 本来ならばBO3という形式上、デッキを1個ずつ見ていくよりも、2デッキ単位で俯瞰したほうが良さそうですが、様々なデッキタイプが存在する現状、2デッキの組み合わせは無数にあり、集計した時十分な母数を確保できない組み合わせが多いように感じたため、1個ずつの分析に留めています。
 なお、集計結果を見て個人的に気になったデッキタイプについては、予選を突破したリストを中心にその内容もなるべく確認するようにしていたので、考察の際に少し触れたいと思います。

 さて、実際に集計してみての環境ですが、長くなりそうなので先に要点だけまとめてしまうと、

①  デッキタイプというレベルで見ればニュートラルビショップが最多となったが、リーダーとして見れば主流は依然ドラゴン・ネクロ
②  一方勝率という観点では、N軸のデッキとそれらをメタる目的のコントロール型デッキ、コントロールに蓋をする超越という三つ巴が次第に形成されていった印象
③  ネクロはミッドレンジ・ネフティスがほぼ半々の分布になったものの、ネフティスの勝率は明確に落ち込んでいった
④  ドラゴンは特に旧来のランプ型が伸び悩み、見かけほど勝率は良くない
⑤    勝率にブレのあるデッキ、安定したデッキが顕著に分かれている


といったところでしょうか。
当たり前のように感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら実際にJCGでは、デッキによっては使用率と予選突破率がちぐはぐということもあり、少なからずデッキ選択における情報面で、差がつきやすい環境だったのかなという印象を受けました。

 ということで、既に前置きが長くなってしまっていますが、以下、全体の使用率推移の俯瞰 ⇒ クラスごとの主要デッキタイプの考察 という順序で進めていきます。考察なんざいらねえからとにかくデータ見せろ!ってかたはページの最後に集計データをまとめて置いておきますので、そちらをご覧ください。

2-1. JCGにおける使用率推移

 まずは各デッキの使用率から簡単に見ていきたいと思います。

 こちらのグラフはJCG予選で主に使用されていたデッキの、日ごとの使用率を表しています。見やすさを優先して比較的少数派、かつ期間を通して目立った変化がなかったデッキタイプを除いてグラフ化していますが、それでも煩雑な点はご容赦ください。

 おそらく使用率上位については、多くの方が肌感覚で理解していたのではないでしょうか。ナーフ直後はミッドレンジネクロ・ランプドラゴンが多数派を占め、8月末に猛威を振るった潜伏アグロロイヤルも相当数いました。そこから一気にニュートラルビショップが数を増やし、アグロ勢力の停滞に伴ってコントロール系のデッキも頭角を現すように推移した形でしょうか。

 とはいえ、デッキパワーへの信頼はちょっとやそっとでは揺らがなかったのか、最終的に9/10時点で、リーダーとしての使用率はドラゴン・ネクロが2トップでした。ネクロはネフティスが、ドラゴンは魔海型がそれぞれ従来のデッキタイプを使用率でわずかに上回る形となりましたが、共通するカードが多く、立ち回りでも似た点があるランプと魔海型を分けずに考えるのであれば、ランプドラゴンが最も主流の選択であったと言えそうです。
※    グラフにある魔海疾走ドラゴンとは、魔海の女王とフォルテまたはジェネシスドラゴン、加えてウルズ・アンリエット・ゼウスのいずれかを用いて10~18点のバーストダメージを狙うコンボを搭載しているものを、便宜上このように分類しました。そのためコンボパーツが一つでも欠けていれば通常のランプドラゴンとして集計しており、集計上両者の境界は特に曖昧なのが実情です。

 それ以外の細かなデッキの傾向としては、潜伏アグロロイヤルが激減したのち一定の使用率を保っているほか、同じニュートラル軸でも緩やかな減少傾向にあるニュートラルウィッチに対して、ニュートラルロイヤルは直近では増加の兆しを見せていました。

 使用リーダー分布等は大手の攻略サイト様も集計結果を出していらっしゃるので、ここで触れるのはこの程度に留め、続いて予選突破率の推移をクラスごとに見ていきます。

2-2. JCG予選の突破率推移

 考察に際しては、必要に応じてデッキ相性の判断にShadowverse Logのランクマッチ集計データを参照しています。煩雑化を避けるため、具体的なデータはこちらには載せていませんので、気になる方は是非Shadowverse Logにてご自身の目で確認してみてください。

(1) エルフ
 さて、冒頭から悲しいお知らせです。エルフはJCGに持ち込まれたデッキタイプのうち、ある程度の母数があるものがOTKエルフのみで、そのOTKもなかなか結果が振るわなかったため(具体的には、予選を突破したものは集計期間を通して2つ)、ここではグラフは割愛させていただきます。
 とはいえ、そもそも確定サーチか否か、根源の採否、ニュートラルギミックを組み込んでいるかなど、幅広い構築をいっしょくたにOTKとカウントして、かろうじて母数があると言える状況です。裏を返せば個々の型をきちんと評価するにはサンプルが足りないわけで、SNSで散見される連勝数などを見ても、雑に弱小デッキと断じてしまうのは早計かなという印象です。
 他のデッキタイプに関しても、いかんせん母数が少ないため、良くも悪くも未知数といった評価に留まらざるをえませんでした。

(2) ロイヤル

 やはり潜伏アグロはデッキ相性の影響が大きいのか、突破率は安定しません。ビショップをはじめとするニュートラル軸の台頭により、盤面で押し負けてしまいやすいことが要因の一つでしょうか。
 構築の幅自体は広く、共通して3投のマスタークノイチを除く、4コスト以上のカードは突破リストの中でも採否や枚数が異なることが多く、全体として旅ガエルの強力さに支えられている印象です。トランプを採用することで、トレードに前向きな姿勢を見せるリストも少なからずありました。

 一方、ニュートラルロイヤルは序盤こそ振るわなかったものの、構築の研究が進み始めたのか、途中から突破率が如実に上がっています。9/6の25%はさすがに母数が少なかったゆえの上振れと言ってよさそうですが、それ以降もコンスタントに一定数が予選を抜けている安定感を見るに(9/15開催分でも複数名の突破を確認)、明確な不利マッチが少なく、出力の高いデッキという立ち位置に落ち着きつつあったように思います。
 リストの内容に関してですが、アルビダや兎耳の枚数をはじめ、採用カードの段階でかなりの個人差があり、まだまだ研究途上の段階にある印象を受けました。特に2コスト除去スペルや3コストフォロワーの選択は自由度が高く、予選突破リストの中にはシンデレラを切っているものも珍しくありませんでした。
 そのような中、多くの突破リストに共通して見られたのが、ツバキ・ファングスレイヤーから合計3枚以上を採用している点で、最も持ち込まれることが多かったドラゴンへの対策の重要性がうかがえました。ツバキに関しては、ニュートラルビショップの中盤盤面に、攻撃力5以上のフォロワーが現れやすいことも活躍の一因かもしれません。

(3) ウィッチ

 ウィッチは集計期間を通して非常に多くのデッキタイプを目にしました。ここでは一定の母数があった3タイプについてグラフ化していますが、テンポウィッチやハイブリッドウィッチの使用者もおり、いずれも母数が少ない中結果を残していたため、時間が許せば検討したかったところです。

 さて、こうしてグラフ化してみると超越の強さが目を引きますが、先ほどの使用率推移のグラフと合わせて見てみると、いかにこのデッキタイプが環境の影響を受けやすいか、非常に分かりやすいと思います。
 唯一潜伏アグロロイヤルが多数存在した9/1、そしてニュートラルビショップが本格的に台頭してきた9/6以降は比較的低い突破率に留まり、逆に、ヘクターのナーフにより若干パワーが落ちたネクロマンサー以外に目ぼしいアグロ~ミッドレンジデッキがなかった9/2, 3は驚異的な勝率をマークしています。後半突破率が落ちたとはいえ、あくまで平均的なラインには収まっており(予選では32デッキから2デッキが抜けるため、2 / 32 = 6.25%が標準と想定)、かなり活躍が見込まれる環境だったのではないでしょうか。

 予選突破リストの内容に関してですが、キマイラの採否によって大きく2パターンに分かれていたようです。キマイラを採用しているタイプでは、フレイムデストロイヤーとの枚数バランスが永遠の課題といった印象もありますが、キマイラ:フレイムデストロイヤー = 1 : 3 ~ 3 : 2 の範囲でいずれも予選を突破しているリストがあるため、構築次第でどの枚数比でも戦うことができそうです。最も多かったのはキマイラ2フレイムデストロイヤー3の形で、フレイムデストロイヤー2枚のリストでは打点不足を避けるため、ゴーレムアサルトを厚くとる、光の道筋・鏡の世界でデッキの回転率を上げるなどの工夫が見られました。実はこの道筋・鏡から計3~4枚投入するデッキタイプは母数の少なさに対して予選突破数が多く、アグロタイプの減少・弱体化に対する一つの解答であったように思います。

 これに対して9/2, 3の予選では、キマイラを切り、代わりにルゥを採用したリストの突破が目立ちました。いずれも炎の握撃を2枚採用しており、早期のサーチと、ゴーレムアサルトのようなPP効率の安定したスペルにより事故率を低く抑えていた点が特徴として挙げられそうです。とはいえ、やはり除去のパフォーマンスにおいてキマイラ型に劣るためか、ニュートラルビショップが暴れている9/6以降の環境からは姿を消しており、全体として「遅い環境の時の切り札」といった印象のリストでした。
 ちなみに、キマイラ / ルゥ双方のタイプ(道筋・鏡ガン積みのリストを除く)でゴーレムアサルトの採用が相当数見られ、逆にレヴィはほとんどのリストでピン採用、入れても2枚という形でした。ゴーレムアサルトの取り回しの良さと、スピード感のあるデッキの減少により、相手の攻め手を捌くカードが切り替わったといったところでしょうか。

 超越の分析に相当な文章量を割いてしまいましたが、秘術ウィッチはどうでしょう。グラフを見る限りでは、とびぬけた突破率を誇るわけでもなく、安定しない印象を受けます。
 突破リストを見ても、ナーフ前環境の標準的なリストから大きな変化はありませんでした。破砕の禁呪など豊富なAoEで腰を据えて対処したいニュートラルビショップと、死の舞踏など単体除去を絡めつつバーンダメージで素早く詰め切らなければならないランプドラゴンという、メタ要求の相反する2デッキが環境上位に共存していたために、勝率がかなりマッチングに依存していたのではないかと思われます。

 残るニュートラルウィッチについては、こちらも少なからず不安定な印象を受けるものの、秘術に比べると多少勝ちやすかったようです。ヘクトルやプリスという盤面・フェイスどちらにも打点を入れやすいフォロワーが豊富なためか、先ほど触れたニュートラルビショップメタとランプドラゴンメタとの板挟み問題も幾分緩和されていたのではないでしょうか。
 予選突破構築については、オズ採用のアグロ寄せ・マナリアグリモワール採用のコントロール寄せの両タイプを確認できました。
 オズ型では、スペルは死の舞踏・変異の雷撃から合計4枚の採用が鉄板だったようで、2 : 2という枚数比が最多でした。また、ギルガメッシュも2~3枚採用されており、全体として、盤面を取られる頃には疾走・バーンでリーサルを取る設計思想となっています。攻撃的な構築でありながらも、除去とリソース面でニュートラルビショップに比較的対応しやすい点が環境に刺さった形でしょうか。事実、Shadowverse Logのランクマッチデータによれば、ニュートラルビショップに対しては微有利がついています。
 対してグリモワール型は、サハクィエルで投げつけるフォロワーを豊富に用意してある、柔軟なリストが抜けています。ルシフェル・イスラーフィール・バハムート・ゼウスとランプドラゴンを思わせる顔ぶれに加え、集計期間後半にはオーディン入りのリストが結果を残していました。サハクィエルとのシナジーはほぼないに等しいですが、ドラゴンや急増傾向にあったネフティスネクロに対する鬼札として機能したものと思われます。また、ほとんどに共通していたのがグリモワール2枚採用という点で、3投のテンポロスが許容される環境ではなかったことがうかがえます。

(4) ドラゴン

 多くのプレイヤーが積極的に持ち込んだドラゴンですが、突破率はかなり安定しない印象を受けました。予選を突破したリストの数だけを見るとかなり強力に見える反面、実はその要因として母数の多さも少なからずあったようです。

 まずオーソドックスなランプドラゴンですが、超越が息をしやすく、攻撃的なデッキも息切れをしにくいという環境でコンシードまで持ち込み切れないことも多く、苦戦を強いられたものと思われます。ニュートラル軸が増えたことで、コンシード型が刺さりやすくなったという意見もちらほらと見かけましたが、少なくともマクロな見方においてはその限りでなかったようです。とはいえ、どの集計日をとっても潜伏アグロ・超越・ネフティス、と天敵が存在した中、抜ける時にしっかり抜けているのはやはりデッキパワーのなせる業でしょう。ドラゴンに関しては、スムーズにPP加速ができればどのデッキとも渡り合えるため、デッキ相性という物差しだけでは図りきれず、PP加速と除去、フィニッシャーの枚数バランスなど構築の僅かなバランス差が勝敗に結びついている可能性も小さくありません。
 さて、気になる突破リストの構築内容ですが、総じてナーフ前よりもフィニッシャーとなりえるカードの採用枚数が増えています。ほとんどのリストで咆哮2、ゼウス2という採用が見られ、フィニッシャーと処理役を兼任できる取り回しの良さが評価されたものと思われます。咆哮を減らしているものは代わりにウリエル・ジェネシスドラゴン・サタンのいずれかが入っており、やはり積極的にゲームを終わらせにいく選択もとることができる構築となっていました。
 また、RAGE予選からちらほらと見かけることも多かったですが、序盤の処理札としてティナ・ドラゴンウォリアーのピン採用が目立ち、ラハブも1~2枚とっているリストが珍しくなかったです。やはりニュートラル軸の立ち上がりをいかにして食い止めていくかが鍵となったのでしょうか。他にも除去札として、ドラゴニュートフィストやラースドレイクなどの採用も見られました。

 続いて魔海疾走型のランプドラゴンです。コンシード重視の型に比べて若干突破率が高いですが、やはり不安定という点は否めません。自分からリーサルを取りに行く力が高い代わりに、ニュートラル軸の盤石なムーブを捌ききれないことも増えてしまうといったところでしょうか。各デッキの使用率推移を見るに、集計期間後半では、ニュートラルビショップの中型フォロワーの一斉展開にある程度の耐性を備えつつ、ネフティスネクロやコントロールヴァンプの守りを抜ききるだけの攻撃力も抱えておくことが求められたことでしょう。
 構築に関しては前述の通り、フィニッシャー回りを除いて、コンシード型との共通点が少なくないです。ほとんどの予選突破リストでサハイスラ3投が見られ、ティナ・ドラゴンウォリアー・ドラゴニュートフィストなどの除去札も採用例が多かったです。
 そんな中、コンシード型との大きな違いとなったのが、灼熱の嵐の採否です。コンシード型の予選突破リストではほとんど目にしなかった灼熱の嵐ですが、魔海疾走型では予選突破リストのおよそ半数で採用されています。ニュートラル軸及びミッドレンジネクロの息の長さに対して自盤面にフォロワーを残しにくいことから、コンシード狙いでの採用が難しくなってしまった反面、「特大バーストのコンボパーツが揃うまで」という期限付きで捌くだけであれば、依然コストパフォーマンスの高いAoEとして機能したということでしょう。実際、サハイスラ(ルシ)を採用せずに灼熱を3投し、空いた枠でフィニッシャーを厚く取っているリストも複数、予選突破を果たしており、意外と現実的な選択肢であったように思います。
なお、フィニッシャーについてですが、魔海の女王2枚にジェネシスドラゴン・ゼウスが各2~3枚、ウルズまたはアンリエットが2枚というバランスが多く、魔海ピン採用のリストでは、フォルテウルズやサタンといったサブプランを搭載している形が主でした。

 総じて、守りの固いコンシード型ランプは攻め手を増やしたものが、攻め手の充実している魔海疾走型ランプは除去札をしっかりと確保したものが予選を突破していた印象です。その意味では、こうしてデッキタイプを切り分けて捉えるのもいいですが、攻守のバランスをとったランプドラゴンが環境に合っていたというトータルな考え方もできるかもしれません。

(5) ネクロマンサー

 ヘクターのナーフ後も依然愛用されていたネクロマンサーですが、ミッドレンジネクロの予選突破率はグラフの通り、非常に安定しています。特別高い水準というわけではありませんが、標準的なラインはクリアしており、十分に持ち込む候補たり得たといえるでしょう。特にニュートラルビショップやコントロールヴァンパイアの増加にも動じなかった点は評価が高く、こちらも環境に依存しない高いデッキパワーの持ち主だったと評することができそうです。
 デッキパワーを活かすという発想に違わず、予選突破リストの構築も前環境からの大きな変化はありませんでした。ヘクターの出力が若干低下したことで、ドラゴンの大型フォロワーを捌くためにネクロアサシンの採用枚数は増えていますが、ヘクターや不死の大王自体はほとんど枚数を変えませんでした。予選出場リストの中にはヘクターの枚数を減らしたリストも散見されましたが、やはり予選突破にまで至ったリストのほとんどは3投で、そのパワーの高さが証明される形となりました。
 他に従来と若干変わったところとしては、闇の従者の採用が増えた点が挙げられます。もちろん前環境から繰り返し見てきたフォロワーではありますが、ニュートラル軸の中盤のテンポに対応するにあたって、ボーンキマイラでは少し非力と見られたのか、全体として採用枚数等のウェイトが闇の従者に傾いた印象がありました。合わせてウルズを積んでいるリストも相当数あり、中盤の殴り合いで遅れを取らないよう意識された形となっています。

 続いてネフティスネクロを見ていきます。ネフティスネクロは今期大幅な増加を果たしましたが、メタデッキとしての立ち位置に収まりきれず、予選突破率は下がっていく一方でした。テンポウィッチと同じく、キーカードを引くこと自体が裏目になってしまう場面も多いデッキタイプゆえの不安定さがあり、Shadowverse Logのランクマッチデータを参照する限りでは、おそらくメタ対象だったと思われるニュートラルビショップに対して、明確に不利がついてしまっています。加えて超越が増加傾向にあったこと、ランプドラゴンの構築が魔海型含め攻撃的に変化してきたことも逆風となり、総じて結果を残しにくかったのではないでしょうか。
 とはいえ、集計期間前半にはかなりの勝率をマークしていた時期もあり、その構築にも幅がありました。まずフォロワーのコスト帯についてですが、2378型・2478型のどちらも、予選突破に成功しているリストが複数あります。数としては2378型のほうが多いですが、2478型はそもそも母数が少なく、どちらの型が優れているというのは一概に結論付けることができなさそうです。また、ごく少数ではありますが、確定サーチを捨てた23478型の予選突破も見られました。

 2378型の構築では、採用する3コストフォロワーに個性が出る印象がありますが、闇の従者・ボーンキマイラはそこまで人気がなく、予選突破リストの多くでミニゴブの姿を見かけることが出来ました。破魂の少女、よろめく不死者など優秀な2コストフォロワーを引っ張ってきてくれることに加え、サーチカードなので、リソース枯渇を緩和しつつもモルディカイを早期に引き込んでしまう事故がない点も採用を後押ししたのではないでしょうか。ネフティスネクロはマナカーブが歪になってしまう分、1ターンで2, 3コストのカードを複数プレイするケースが多く、ハンドが窮屈になりやすいデッキのため、このリソース枯渇緩和は地味に重要なポイントかもしれません。
 他にも、カイザや御言葉の天使を採用しているリストもあり、序盤で大きな差を付けられないことを重視した構築が予選を突破しやすかったような印象を受けました。

 2478型の構築では、従来はウルズやネクロアサシンの採用が多く見られましたが、今回集計期間内に予選を突破したリストでは、ティナ・悪戯なネクロマンサーといった、中盤の捲りを担うカードの採用が目立ちました。やはりニュートラル軸を捌くことに重きをおいた形でしょう。2378型に比べて墓場の貯まりが悪いので、腐の嵐・消えぬ怨恨・死の祝福といったネクロマンス消費カードの採用枚数を抑え、フォロワーとEPで盤面を維持していく構築が多かったようです。

(6) ヴァンパイア

 さて、ヴァンパイアですが、今までにない勢力図になったと言えそうです。まず、これまで常に一定数存在していたアグロヴァンパイアが使用数・予選突破率ともに強烈に値を減らし、冬の時代を迎えました。使用率は集計期間の後半に至っては1%台を推移しており、9/1を除いて予選突破もかなわなかったようです。度重なるナーフにより攻めの速度が否応なく落ちてしまったところに、序盤~中盤の動きが手堅く、盤面に強いニュートラル軸が台頭してきたことによって、環境から追いやられてしまった形となります。

 一方、復讐ヴァンパイアは母数がそれほどなかったことも手伝って、とんでもない突破率のブレとなりました。上手く復讐ギミックがハマれば恐ろしい出力になるのは今環境でも変わりませんが、Shadowverse Logのデータによれば、ニュートラル軸のデッキに明確な不利が、ランプドラゴンとネフティスネクロに明確な有利がついており、前環境までのような、自分のデッキとの戦いゆえのブレに加え、マッチングによるブレもより大きくなっていたように思います。
 予選を突破した構築は全体的にアグロ寄せの型で、黙示録入りのリストは9/15の予選突破分を1つ見つけるに留まりました。アグロ寄せの型では、ゴブリン採用・カオスシップ不採用に加えて、血の取引やバフォメットを採ることで復讐ヴァンパイア特有の事故を緩和したリストが結果を残しており、他にカオスシップを採用しているリストでも、サーチ先をブラッドウルフと糸蜘蛛の悪魔に絞るなど、不確定要素を減らす形となっています。

 残るデッキタイプとして挙がるコントロールヴァンパイアですが、今環境ではナーフ前にも増して幅を利かせたと言うことができそうです。極端なアグロデッキが減少し、ミッドレンジネクロの場持ちも緩和されたことで、中盤以降、持ち前の除去力・回復力を活かせる機会が増えたものと思われます。環境の変化に合わせて、苦手対面である超越やネフティスも増加していましたが、結局ニュートラル軸やドラゴンが多数を占めていたためか、思いの外突破率が落ち込むこともありませんでした。おそらく、BO3という対戦形式ゆえに、苦手マッチを落としても、もう一方を高い精度で刺しにいけるデッキとして機能していたのではないでしょうか。集計期間を通して高い突破率を維持し続けることに成功しています。
 予選突破リストの内容についてですが、コントロールヴァンパイアは最も構築が固まっていたデッキタイプと言えるかもしれません。バフォメット・ベルフェゴール以外のドローソースとして、漆黒の契約1枚または血の取引2枚という選択がほぼ全ての予選突破リストに共通しており、4コストフォロワーもティナ・裁きの悪魔から2~3枚採用のケースが最も多かったです。やはりナーフの影響により豪拳の用心棒が外れ、代わりにニュートラル軸の猛攻を凌ぐことのできるフォロワーが採用されたということでしょう。緋色の剣士はもともとデッキコンセプト上、フェイスに2点を飛ばす機会が少なかったため、バリバリの現役です。
 僅かに個人差が出たのは7コスト以上の採用フォロワーで、血餓の女帝・アルカード・バハムートあたりの採否あるいは採用枚数については、リストによって多少異なっていました。

(7) ビショップ

 残すところあと1クラスとなりました。ビショップについて見ていきましょう。やはり、使用数・予選突破率の両面においてニュートラルビショップが高い数字を記録しています。おそらく集計期間において、仮想敵として最も対策を講じられてきたデッキタイプの1つであり、その中でこれだけの予選突破率を出していることからも、そのデッキパワーは疑う必要がなさそうです。
 予選突破リストの構築は共通点も多い反面、一部採否が分かれるカードも存在し、多彩なアプローチを見ることが出来ました。特に個人差が出ていたカードとして挙げられるのは、ワイズマーマン・ミニゴブリンメイジ・ギルガメッシュあたりで、2~3枚採用が一般的だったゴブリンプリンセスについても、不採用で予選を突破したリストが複数存在します。また、お茶会やガルラの採用枚数も人によりけりでしたが、メタデッキの躍進が著しかった集計期間後半では、盤面を返されてしまったときに直接打点を出せるガルラの3投や、ギルガメッシュを採用しているリストの突破が目立ちました。リソース補充手段がないに等しい中、長期戦への耐性を簡単に手に入れることができるカイザも、集計期間後半では2~3枚必携となっていたようです。

 最後に、イージスビショップです。環境の変化により、ナーフ前よりは戦えるようになった印象があります。やはりニュートラル軸の展開に対する解答が豊富で、ネクロマンサーに対する消滅、ドラゴンに対する神魔裁判所など、使用率が高いデッキに対して比較的有利な立ち回りを取れる点は高評価です。ただ、ニュートラルデッキに対応するためには従来の6コストを膨らませた形では若干重く、結果として苦罰の審判者が抜けるなどしてリソース面に不安が出てくると事故が起こりやすくなってしまい、母数の少なさも相まって予選突破率は大きくブレのある推移となりました。
 予選を突破した構築については、数が少ないのでなんとも言い難いですが、ソニア3投やプリズムプリースト採用、エクスキューション2投など、いずれもピーキーな部分がありました。満遍なく対応できるような構築には、前述のようなリソース事故の問題がつきまとうため、予めメタ対象を絞ってそこに特化することで、多少の事故でも対象だけは刺しやすくし、なおかつ不要なメタカードを削ってスリムになった分ドローソースを追加しやすかった点が功を奏したのかなという印象でした。

2-3. BO3環境の総括


 ここまで取り上げてきた各デッキタイプについて、JCG構築戦開催日ごとの予選突破率の、平均値と標準偏差を示したものが上記散布図となります。
 標準偏差はざっくり言えば、ここでは「ブレ幅」を意味し、この値が高いほど予選突破率が安定しなかったと見ることができます。ただし、ここでは各デッキタイプの母数が考慮されていないため、母数が少なかったがために極めて高い予選突破率を出したデッキタイプなどは、それだけで標準偏差の値も非常に大きくなっている点に注意が必要です。実際、ニュートラルロイヤル・復讐ヴァンパイアは標準偏差12超えという事態になっており、図の見やすさを確保するため、ここでは省略しています(ニュートラルロイヤルの平均予選突破率は9.31%、復讐ヴァンパイアは7.38%)。

 これらのデータに基づき、JCGにおけるBO3で特に結果を残していたデッキタイプを大まかに以下のように分類しました。
 もちろん、あくまで変化を続ける環境のごく一部を切り取ったに過ぎませんし、使用数が少ないデッキについては、構築面や試行回数面でそのポテンシャルが発揮されていないだけという可能性があるため、評価を保留せざるをえません。そのためこの表を以て環境を網羅したと考えるわけにはいきませんが、既に見てきた構築内容の傾向や使用率推移、ランクマッチにおける勝率データなどを合わせてみることで、一定の判断材料にはなったというのが、大会を終えての偽らざる感想です。

 ちなみに、上の表と冒頭で触れたデッキの使用率推移を照らし合わせてみるとざっとこんなところでしょうか。
 こちらにしてみても、あくまでマクロな見方をしたときの分類であり、かつ相対評価なので、ドラゴンの時代が終わったなどとは口が裂けても言えません。それでも、「とりあえずパワーが高いからドラを握ろう」という発想があまり通用せず、他にも有効な選択肢が十分に増えていたこと、そして真にメタを張るべき相手は何なのかなど、ここから見えてくる情報も少なくないのではないでしょうか。同じ「高勝率」という表記の中でも、実際の勝率には開きがあるので、単に使用率が低いから信用できないとするのではなく、他の資料と合わせて判断を下す必要はありますが、多少は実用に耐えうるデータにまとまってくれたかなと思います。

 ここまでつらつらと述べてきたものは全てただの「データ」です。あくまで考察の一面を形作るものであって、データ上の勝率が低いから即ち弱いデッキとはなりません。ただし、そのデッキタイプの現在主流の構築が通用しにくいことや、場合によってはその原因自体をデータから読み解けることもあります。それを基に構築・プレイングを再検討することで、それまで勝率が振るわなかったデッキが大躍進を遂げることは決して珍しい話ではなく、それこそが「メタが回る」ということではないでしょうか。
 環境を正確につかみ、王道の選択肢を見つけるもよし。デッキの弱点・相性をマクロ視点から判断し、そこから環境の一歩先を行くリストを生み出すもよし。環境に対して何をすればいいのか自信がない時、データはきっと議論の出発点となり、考察の足場になってくれるはずです。
 

3. 終わりに

 「シャドウバースは運ゲー」というのはWLD環境に入ってからというもの、輪をかけて耳にするようになったフレーズで、自分自身そう思うことも多々あります。ただ、こうして自分なりに環境を考えてみて思うのは、その「運」という表現の中にあまたの勘違いや思い込みが紛れ込んでいるおそれがあるということです。

 例えばニュートラルビショップ・ミッドレンジネクロを持ち込んだ人が言う「運ゲー」と、ランプドラゴン・ネフティスネクロを持ち込んだ人が言う「運ゲー」では、全く意味合いが異なるのではないでしょうか。
 各デッキの平均勝率自体にそこまで大きな開きはありませんが、先程の散布図を見れば、その安定感の差は一目瞭然です。それを踏まえれば「運」の一部は「デッキ勝率のブレ幅」であることが分かりますし、加えてリストの考察やランクマッチでの勝率データを参照すれば、そのブレは「マッチ相性」によるものと分かります。不利マッチを踏んでしまう「不運」にしても、環境の推移を正確に捉えることができているかどうか次第で、本物の不運なのか、避けられた展開だったのか解釈が分かれてくることでしょう。
 TCGである以上、運要素とはこの先も付き合い続けていかなければなりません。それでもこの例のように、運が色濃く表れる選択肢と、さほど運に左右されない選択肢が目の前にあったとき、それと知らずに前者を取ってしまうケースが多いからこそ「運ゲー」が助長されているように思います。当然、ブレ幅を承知の上で、その分ハマった時の突破力の高さを見込んでランプ・ネフティスを選択するのも立派な選択です。その選択のリスクを理解しているかどうかが、それを「戦略」と呼べるか否かの分水嶺であり、負けてしまった時の「運」に対する姿勢にも違いが出てくるのではないでしょうか。

 こうして、自分の肌感覚での環境理解と実際の環境とのギャップを埋めていくと、「運」に見えていたものが次第にそれ以外の、それも自分の手が及ぶものに見えてきます。もちろん、ランクマッチや大会の経験が豊富で、それだけギャップが小さくなっている人や、環境への感度が良く、初めからズレがない人はいます。チームで日夜環境や構築の議論を重ねている人も、おそらくは環境を把握しやすいでしょう。そうした人達から見れば、何を当たり前のことを、という話なのかもしれません。
 それでも自分を含め、少なくない人にとって、「運」のせいにしていた部分はまだまだ削っていける領域で、そこを突き詰めていけばより一層このゲームを楽しめるんじゃないかな、と自分は思ってしまいます。そんな身勝手な期待感、この記事を読んでくださったかたに少しでも伝われば幸いです。

 ということで、長くなってしまいましたが、以上が自分なりの9月前半BO3環境の解釈となります。
行き当たりばったりの長文に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。質問や意見は気軽にコメントに投げてください。

~各種データ~
 以下に各JCG開催日ごとの予選使用リストと予選突破リストの個数を集計した表を掲載しています。デッキの分類はある程度の主観に基づいている点、予めご了承ください。
 また、直接自分でデータを触って表やグラフを出したい方は、こちらから各種データや本文に掲載した表・グラフ等をまとめたExcelシートをダウンロードできますので、ご活用ください(DL期限10/10, DLパス: WLD)。

- 9/1分集計表


- 9/2分集計表


- 9/3分集計表


- 9/6分集計表


- 9/9分集計表


- 9/10分集計表

 
更新日時:2017/09/27 11:33
(作成日時:2017/09/26 01:30)
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